このサイトでは黒木亮作品を中心に、金融・企業・国家の裏側を描く小説をレビューしています。
まずはおすすめ10選からどうぞ。
黒木亮とは?金融と企業の裏側を描く作家
黒木亮は都市銀行、証券会社、総合商社にて20年以上勤務し、国際協調融資やプロジェクト・ファイナンス、貿易金融、航空機ファイナンスといった国際金融の実務を手がけてきた経歴を持つ。
2000年、イラン向けの巨大融資案件を巡る邦銀と米系投資銀行の攻防を描いた『トップ・レフト』でデビューし、
以降『巨大投資銀行』『排出権商人』『トリプルA』『鉄のあけぼの』など、金融・企業・国家の裏側を描く経済小説を書き続けている。
実務家としての経験に裏打ちされたリアリティと緻密さが最大の特徴で、多くの作品でモデルとなった実在の人物や事件が下敷きにされている。
専門用語の多さに戸惑う読者もいるが、それこそが黒木作品を「フィクションでありながら実話のようなリアリティ」たらしめている理由でもある。
初心者が最初に読むべき3冊
『トップ・レフト:ウォール街の鷲を撃て』
黒木亮のデビュー作にして、専門知識がほとんど不要な一冊。
イラン工場建設のための巨大融資案件を巡り、邦銀の今西と米系投資銀行に転じた元同僚・龍花が激突する、王道の対決構図で一気に読ませる。
『カラ売り屋』シリーズ
連作短編形式で、金融の専門知識がなくても物語として楽しめる構成になっている。
空売りファンド「パンゲア&カンパニー」が企業の不正を暴いていく痛快な展開はエンタメ性が高く、シリーズものとして次作へも読み進めやすい。
『巨大投資銀行』
黒木作品の中でも最も多くの読者に読まれてきた代表作。
邦銀からウォール街の投資銀行に転じた桂木英一が、M&Aや証券引受を通じて成長していく物語で、専門用語こそ出てくるものの、一人の男の成長譚として展開が速い。
黒木亮おすすめランキング10選
1位:巨大投資銀行
邦銀から外資系投資銀行「モルガン・スペンサー」に転職した日本人バンカー・桂木英一が、M&Aや証券引受などの金融取引を通じて成長し、日本の金融再生に挑んでいく物語。
金融業界を描いた小説の中でも完成度が高いと評されており、邦銀と外資系の企業文化の違いを、実務経験に基づいたリアリティで描き出す点が読者から支持されている。
2位:トップ・レフト:ウォール街の鷲を撃て
日系自動車メーカーのイラン工場建設のため、1億5000万ドルの巨大融資案件が持ち上がる。大手邦銀ロンドン支店次長・今西は、国際協調融資の主幹事(トップ・レフト)を獲得すべく交渉を開始するが、かつての同僚で米系投資銀行に転じた龍花が立ちはだかる。
読他の黒木作品と比べて金融の予備知識がほとんど必要なく、王道の対決構図で一気に読み進められると評される、著者の衝撃のデビュー作。
3位:カラ売り屋
元官僚の北川靖が、米国人の仲間とともに設立したカラ売り専業ファンド「パンゲア&カンパニー」が、不正を働く企業を次々と告発していく連作短編集。
空売り屋=悪という世間の固定観念を覆す痛快さと、徹底した現場取材への執念が読みどころ。詳しい書評は当ブログの個別記事でも紹介している。
4位:ザ・原発所長
福島第一原発の所長・富士祥夫(吉田昌郎氏がモデル)を主人公に、原発事故の当日と、それに至るまでの組織的背景を描いた社会派小説。
吉田所長を単純な英雄として描かず、コスト削減を推進した過去の責任にも踏み込んでいる点が、他の震災関連作品とは一線を画す。詳しい書評は当ブログの個別記事でも紹介している。
5位:法服の王国
伊方原発訴訟や日本海原発訴訟を軸に、司法という巨大組織が国策とどう向き合ってきたかを描いた作品。裁判官という職業の内幕にまで踏み込む。
『ザ・原発所長』が現場と経営の断絶を描いたのに対し、本作は行政と司法の断絶を描く。
著者自身、本作で原発というテーマに問題意識を持ったことが『ザ・原発所長』執筆のきっかけになったと語っている。
6位:国家とハイエナ
巨大ヘッジファンドがアルゼンチン、コンゴ、ペルーなど債務を返済できない国家の債券を安く買い叩き、訴訟によって強引に資金を回収していく実話ベースの物語。
著者自身が「実名や社会的出来事の記述は事実に沿っている」と明言するほどの取材密度。国家対民間ファンドという、他の作品にはないスケールの攻防が読みどころ。
7位:トリプルA
格付会社の評価を巡り、金融機関との間に軋轢が生じ始めたバブル期の日本を舞台に、若き銀行マン・乾慎介らを通して格付会社の興亡を描く国際経済小説。
サブプライムバブルを演出した「戦犯」とも呼ばれる格付会社という、民間企業の一意見にすぎないはずの記号がなぜ市場を支配する権威になったのかというテーマを扱っている。
8位:鉄のあけぼの
敗戦国・日本に世界最新鋭の製鉄所を打ち立て、高度経済成長の扉を開いた川崎製鉄(現JFEスチール)初代社長・西山弥太郎の生涯を描いた大河小説。
金融小説の書き手として名を成した著者が、鉄一筋に歩んだ経営者の私心のない生き方に焦点を当てた作品で、著者自身「書きながら何度も涙が出た」と語るほどの熱がこもっている。
9位:排出権商人
京都議定書によって莫大な排出権購入を迫られた日本を舞台に、大手エンジニアリング会社の松川冴子が「排出権ビジネス」という新しい国際ビジネスの利権構造に挑んでいく物語。
「空気が大金に化ける」という排出権取引の実態を、世界11カ国に及ぶ取材で描き出す点。テーマの独自性は高いが、他の黒木作品に比べてやや専門色が強いという声もある。
10位:獅子のごとく
かつて銀行に実家を破綻処理された若き銀行員・逢坂丹。
お金への執着を爆発的なエネルギーに変え、移籍した米系投資銀行にて、手段といとわない違法スレスレの手段で社内のライバルを蹴落としながらのし上がっていく物語。
他の黒木作品では主人公がヒーローのようにに描かれることが多いが、本作の主人公は目的のために手段を選ばない人物として描かれており、その強烈な人物造形が読者を引き込む。
黒木亮が好きなら読むべき作家
真山仁
企業買収と投資ファンドの攻防をエンタメとして読ませる代表作家。代表作『ハゲタカ』は、黒木作品と比較されることの多い金融小説の金字塔であり、黒木亮の緻密さとはまた異なる、人間ドラマとしての厚みが持ち味。
楡周平
金融と企業犯罪の境界を描く、黒木亮読者と相性が良い作家。市場や企業組織の闇をサスペンスとして読ませる筆致に定評があり、経済小説特有の専門性とエンターテインメント性のバランスを求める読者に向いている。
黒木亮は社会の構造を読む小説
黒木亮の小説に共通しているのは、悪人が一人いるから事件が起きるのではなく、普通の人間たちが積み重ねた合理的な判断の先に、破局が待っているという構造そのものを描いている点である。
金融、原発、司法、鉄鋼。
舞台は違っても、描かれているのは同じ「巨大組織がどう個人を飲み込んでいくか」という問い。
ランキングから1冊選べば、必ず刺さるはずだろう。